(01- シャドーイングと音読の科学)
◆シャドーイングとは?
聞こえてくる英語を追いかけるように、声にだして同じ事を発話していく事です。
~イメージ~
※聞こえてくる英語
Once upon a time, there lived an unhappy ‥
※自分が発話する英語(少し遅れて発話する)
______Once upon a time, there lived an ‥
少し遅れてついていきながら、声を出して同じ事を言っていきます。
同時通訳の方のトレーニングにも使われていて、
元々は聴覚音声学という、人はどうやって音を認識している?
という学問での実験手法だったようです。
シャドーイングは、脳の言語に関係する部分だけではなくその他の部分も活性化され
とても効果があるようですが、なぜ効果があるのか?正しいシャドーイングのやり方は?
理論的に上達する理由を理解し、正しく学習方法に取り入れていきたいと思います。
◆英語の勉強方法にも流行を感じることがあります。
・聞くだけ~~、
・文法よりも~~、
・〇〇〇語だけで~~、などなど
本を売るためには“仕掛け”が重要なので、誤解(優良誤認)にならない程度で、
流行を使って売れるようにうまくうたった商品がたくさんあります。
これとは別で、第二言語習得を研究している方々の世界でも、
ブームのようなものがあるようです。
昔は音読はとても大切にされました。
「書いた文字と発音を対応させるトレーニングが必要」だと考えたからです。
確かに、幼児は文字よりも先に会話(音)から言語を覚えるので、
後で習う文字に音を対応させないといけません。
この次の時代に別の考えが出てきます。
「文章を読む時は必要な単語を選び読み、それらの単語から情報を得ている」
という考えです。
分からない英単語はとばして読み進めてください、
という無茶な指導を受けたことがあるけど、ここからなのでしょうか?
今はもうそんなことをいう指導者はいないのでしょうか?
次の考え方として、
「英文を読むときは、ほぼ全ての語を認識し意味をくみ取る処理をしている」
というものです。
目の焦点の動きを詳細に観察できるようになった事で、
読むのが早い英語ネイティブでも、ほぼ全ての単語を認識している事が分かったのです。
約0.2~0.25秒で1語を認識するイメージです。
この考えが主流になった時、多読、多読と言われるようになったのでしょうか。
ほぼ全ての語を認識しながらネイティブのスピードに近づくには、
1語1語の認識のスピードを上げるしかありません。
それには『音韻符号化処理能力』を早くするトレーニングが重要です。
◆シャドーイングと似たトレーニング方法で、
パラレルリーディング、リピーティングがあります。
パラレルリーディングは、音声を聞きながら、テキストを見ながら、
英文を目で追っていったり、もしくはシャドーイングする事です。
脳の処理能力には一定のキャパがあるので、見ながら、聞きながら発音することは難しく、
読むか、聞く、どちらかに集中してしまう事があります。
初めてシャドーイングに挑戦する時等、難しいと感じる時は、
発話しないパラレルリーディングから始め、
段階を踏んでシャドーイングへ移行する事は効果的です。
リピーティングは学校でもよくした方法です。
一旦区切りをつけて、文章単位等でリピートする事です。
シャドーイングとは大きく異なります。
一旦ポーズをとってからのリピーティングでは、発話までに時間がある為、
自分がすでに持つ音の情報に置き換えて発音してしまいます。
文章の意味理解の為には役に立ちます。
発音までにわずかな時間しかないシャドーイングは、
音声を聞いてそれをそのまま発音しようとするので、
オリジナルに近い音情報を発音する事になり、正しい音の記憶ができます。
シャドーイングをしながら、意味理解も同時にできるようにすれば、
理論上はリピーティングの効果もカバーできる事になります。
意味理解力が上がりリスニング力アップ、正しい発音も身につきます。
初めはシャドーイングはとても集中力が必要でしす。
文章レベルをやさしくしたり、同じ文章を何度もシャドーイングする等工夫をし、
最終的には意味理解をしながらのシャドーイングを実践しました。
脳にすごく負荷がかかるので、“トレーニング” という感じでとても疲れる学習方法ですが、
続ければ、とてもとても効果があります。
◆『書かれた文章の読みのプロセスには、個々の語の音韻変換が含まれており、
かなりの速度で読める人(例えば、英語母語話者)でも、この音韻符号化(省略)
が明らかになっています。』
(P36、シャドーイングと音読の科学/門田修平著より引用)
音韻符号化とは、書かれた文字を読んで、一度音の情報にして理解する事です。
英語ネイティブでも英文を読むときは、ほぼ全ての単語を頭の中で読んで(音情報にして)から
文章を理解しているという事です。ぶつぶつとつぶやきながら英文を読んだり、
頭の中で発音しながら英文を読むのは自然な事といえそうです。
音読とシャドーイングはこんなイメージになります。
シャドーイング: 音情報⇒意味理解
音 読:テキスト⇒音情報⇒意味理解
これを少し書き換えてみます。
シャドーイング: 音情報⇒①⇒意味理解
音 読:テキスト⇒②⇒音情報⇒①⇒意味理解
シャドーイングで①を鍛え、正確にリスニングができるようにします。
音読の多読で②を鍛え、速読でも実践することで、
聞く、読む、どちらでも早く正確に文章の意味が分かるようになります。
トイックで必要な速読にもとても役立ちます。