(03- シャドーイングと音読の科学)
◆「2秒以内に復唱できる文章の長さ(単語数)が、音声的に一時記憶できる長さ」
という事が分かりました。
ネイティブは300wpm位で英文を読む事が多いので、
1秒に5語くらいの単語を読みます。
2秒以内に読めるのは10語位となります。
これを参考にすると、
「英文暗記は10語くらいまでで出来た文で、2秒以内に復唱できるものが良い」
という事がいえます。
知らない単語や文法を学習するときは、
短めの文に組み込み、文で覚えてしまう方法が効果的ですが、
その際は10語位までの短めの文章で覚えてしまう事をおすすめします。
◆英文暗唱をする時、ぶつぶつと小さな声で繰り返したりする事はないでしょうか。
これは内語反復と言われ、意識的に繰り返し繰り返し復唱することで、
新しい情報が記憶できます。
これは母語でも英語(第二言語)でも有効だと考えられています。
文法の習得についても、おもしろい事が書かれています。
『母語獲得においては、文法能力の習得は、大量のインプットに支えられ(一部省略)
無意識のうちになされます。』(P169、シャドーイングと音読の科学より引用)
これだけを読むと、“文法は勉強しなくていい”
というようにも聞こえるかもしれませんが、
『大量のインプット』が重要で、それを満たす環境でない限り、
ぶつぶつ暗唱してインプットする事も必要でしょう。
◆英語(第二言語)取得の順序として以下のような段階が紹介されています。
《Ⅰ》日常会話、頻出フレーズなどから、単語と単語のつながりを丸暗記する。
《Ⅱ》文法学習。Ⅰの後や同じタイミングで学習することにより文法習得が活きてくる。
《Ⅲ》Ⅰ、Ⅱを繰り返すことで文法を意識しなくても英語が使えるようになる。
まずは復唱による暗記が重要になり、それが基盤となって文法の習得が進むとあります。
日本人が日本語を話せるようになるまで、英国・米国人が英語を話せるようになるまで、
どちらも、文法を習わなくても言語を使えますが、
それは《Ⅰ》のインプット量が圧倒的に多いからです。
文法は勉強しなくて良い?
文法学習を補えるくらいのインプット量に時間を費やすより、
特に大人であれば、文法ルールを理解し、習得し、
応用して使えるようになる事のほうが、はるかに効率的な勉強方法でしょう。
◆脳の働きを目で確認できる技術があります。
いろいろな課題を与えて、そのときの脳の働きを確認すれば、
どの課題が脳を活性化しているかが分かるというものです。
それによると「音読で脳のウォームアップができる」ようです。
リスニング中、黙読中、音読中で脳の活動をみると、
音読時が最も広い範囲で活発に脳活動を示していて、効果は明らかなようです。
また一定時間にいくつ単語(多分日本語)を記憶できたかという、
記憶テストの例が記してあります。
『なにもせず記憶に取り組んだときは、平均8.3語を記憶、
音読後の記憶テストでは、平均10.1語覚えられたという結果です。』
(P187、川島隆太(2003)
「脳を鍛える大人の音読ドリル/くもん出版」にて報告されている)
計算ドリルでも脳はよく活性化されるそうです。
学生が宿題をする時はまず算数か音読をしてから、
暗記系の勉強をすると良いかもしれません。
英語学習を開始するときはまず音読!これで学習の効率が良くなるようです。
◆シャドーイングや音読の効果を示す実験は、対象や内容も様々です。
・シャドーイングはリスニング力向上に効果がある
・多読は読む速度を上げる効果がある
等を確かめるものがあり、高校生を対象とした実験もあります。
ここでは「リスニング力アップ」をテーマとした実験例で、
生徒を成績の良い順に「A」「B」「C」のグループに分け、
シャドーイングを一定期間訓練した後、
リスニング力がどのように変化するか?という実験です。
どのグループもリスニング力が上がるのですが、
大きく上達したのは“B”と“C”です。
英語の成績がすでによい生徒はシャドーイング訓練をしても、
リスニング上達の効果が少なかったという事です。
シャドーイングで鍛えられるのが、
聞いた音を単語として認知する初歩のスキルのため、
成績上位の生徒はそのスキルはすでに持っている可能性が高いということでしょうか。
それなら、ある程度の英語力がある人なら、
もうシャドーイングは必要がない?