(02- 記憶力を強くする)
◆うまく記憶するためには、物事を関連づけて覚える「連合」が効果的です。
連合は脳の神経細胞を通る電気信号を強くし、記憶につなげます。
脳の神経細胞は電気信号が通る量で、
・記憶しないといけない
・記憶するまでもない
と判断するので、強い電気信号を流す工夫をすれば良いのです。
しかし、人は子供から大人になるにつれ、
得意な記憶の種類が変化する事も考えなければいけません。
『中学生のころまでは、意味記憶の能力がまだ高い(中略)
しかし、この年齢を超えたころから、少しずつエピソード
記憶が優勢になっていきます。』
(P190、記憶力を強くする/池谷裕二著 より引用)
印象的な出来事を覚えているエピソード記憶。
とにかく英単語の意味を丸暗記したような意味記憶。
単純に暗記する意味記憶のような作業は中学生位までが得意で、
その後はエピソード記憶で覚えた方が良いという事でしょうか。
大人は一夜漬けの丸暗記のような記憶が不得意で子供は得意です。
絶対音感のような記憶は、3、4才位までに習得され、
それ以降は習得が難しいのもこの記憶の種類の変化によるもののようです。
さみしいことに、言語の習得は6歳くらいまでが活発のようです。
でも、大丈夫です。
エピソード記憶にうまく頼って記憶を進めれば、効率的に勉強できそうです。
◆高校生になる頃から、
丸暗記(意味記憶)が苦手になってくる事が分りました。
丸暗記が苦手になってくる代わりに、
エピソード記憶で効率よく記憶をしていく方法があります。
『エピソード記憶が発達してくると、丸暗記よりも、
むしろ理論だった記憶能力がよく発達してきます。』
(記憶力を強くする/池谷裕二著/P190より引用)
エピソード記憶は、思い出のように物事を記憶する事ばかりではなく、
「理論だった理解が記憶を助ける」という事でもあります。
理論的に理解しながら記憶していくことで記憶しやすくなりので、
これを英語学習にも応用できます。
前回書いた、語源と結びつける方法は、
事象の連合と理論だった理解の方法も取り込んでいて、
大人が暗記する際の方法としては最適な方法と思えます。
◆意識的に物事を記憶する事はできても、
意識的に物事を忘れる事はなかなかできません。
しかし、忘れる事は曲線で比較的簡単に説明できてしまうようです。
様々な本に出てきますが「エビングハウスの忘却曲線」が有名です。
覚えたことも時間とともに思い出しにくくなるというものです。
リサーチ結果には賛否があるようですが、
覚えた事も1時間後には半分以上思い出せない、
1日経つと6~7割は思い出せなくなる、などという実験結果です。
忘れることへの対策は、ありふれていますが「復習」です。
復習することで、忘れかけた記憶を呼び戻します。
忘れるスピードの度合いがある程度分かっているので、
忘れる前に再度復習し、忘れにくくする、
この効果的な復習のタイミングを紹介してある本も多くあります。
『科学的にもっとも能率的な復習スケジュールは、まず一週間後に一回目、
つぎにこの復習から二週間後に二回目、そして、 最後に二回目の復習
から一ヶ月後に三回目』
(P208、記憶力を強くする/池谷裕二著 より引用)
個人差もあるので、このタイミングが誰にでも当てはまるものでは
ないかもしれませんが、これを目安に復習をするのは、
むやみに学習を進めるよりは効率の良い方法です。
このタイミングで復習をしてみて、
覚えられなければ復習するタイミングを変えたり回数を増やしたりし、
記憶したいと思ったことを確実に記憶定着させる事ができそうです。
時間はかかりますが、自分に合ったタイミングを見つけられればかなり効率的です。
◆睡眠中のレム睡眠とノンレム睡眠。
レム睡眠 ⇒体が休む(脳は活動する事もあり夢を見る)
ノンレム睡眠 ⇒脳が休む(体がよく動くことがある)
これらが交互に90分周期で繰り返します。
「金縛り」はこの原理から説明ができます。
起きる予定ではなかったレム睡眠のときに何かのきっかけで、
脳だけがはっきりと起きてしまい、意識もあり、
でも体は眠っているから動けない、という状況です。
『夢は脳の情報を整え、記憶を強化するために必須な課程である。』
(P212、記憶力を強くする/池谷裕二著 より引用)
睡眠をとらないと記憶がスムーズに進まないのです。
6時間以上の睡眠を推奨している研究者もいます。
また「レミニセンス現象」といい、
睡眠後のほうが学習内容をよく理解しているという現象もあるようです。
睡眠が記憶に大切だとすると、毎日の睡眠時間を活用する為に、
一日に大量の勉強時間をとるより、毎日無理のない学習が大切ともいえます。
毎日コツコツと学習することは記憶する方法としてもとても大切です。
◆効率的な記憶には「興味」と「連合」が大切です。
興味を持った情報に対しては、脳の神経細胞に通る電気信号が強くなり、
その強い信号により必要な情報と脳内で判断され、記憶につながります。
前にもでてきた事柄をつなげる「連合」も同じように効果的です。
理解してすでに知っている事などと、
事象を関連づけながら記憶していくことです。
これらをいかす学習方法として「再話」があります。
これまでにも出てきた勉強方法です。
英語で、人に自分の知っている事や興味のある事を説明するのは
英語学習にとても有効で効果的な記憶にもつながります。