(02- 英語リーディングの科学「読めたつもりの謎を解く」)
◆ボキャブラリーサイズの目標設定について。
知っていなければならない単語力は、目標とする英文読解力に関係します。
語彙の難度を調整していない、
『自然な英文を理解できる読解力をつけたい』
という目標を設定してみます。
この場合、どの位の単語数を知っていればよいのでしょう?
第二言語研究者 Grabe によると、
『英文に出てくる単語の95%以上』が分かれば、
辞書の助け等が必要かもしれないけど、
自分で英文が理解できるレベルであるとあります。
また、流暢に読めるようになるには、
英文に出てくる単語の98%以上を知っている事が目安ともあります。
他の学者もこの数値を参考にしているようです。
前回の単語(既知語)カバー率を参考にして単語数に置き換えると、
95%は、10,000語 知っていなければならない
98%は、40,000語 知っていなければならない、という事になります。
ここから『頻度順に英単語1万語をマスター』を目指してこつこつと覚えていく事は、
むやみに単語を覚えるより効率のよい学習方法といえます。
◆英文に出てくる単語の95%以上が分かるとは?
これは、20語で出来た英文があるとすると、
その中に1語だけ知らない単語がある状況。
20語の中に、3つも4つも知らない単語がある英文は、
自分のレベルに適していない英文です。
自分に合った難易度の英文を見つけて勉強する事は重要です。
単語力不足の場合は、語彙の難易度調整をした教材や、
単語の注釈がある教材を試してみるのも効果的です。
面白いデータがあり、Qian(2002) によると、
語彙知識の広さと深さから読解力を説明できる割合は67%とあります。
英文読解に必要な要素として、2/3は語彙力が大切というイメージ?
しかし、単語を覚える事は大変で、その理由の1つに多義語があります。
1つの単語に多くの意味があるため、辞書を使っても理解が進まない事があります。
また単語のつながりで特別な意味をもつフレーズもあります。
単語は、
・広く知っている事
・深く知っている事
・単語と単語のつながりに慣れる事
が必要なので、未知語といろいろな出会い方をしてみて、徐々に身につけていく事も大切です。
多読という勉強方法をよく耳にするのはこのような理由からでしょうか。
◆英文中に知らない単語がある場合、覚える・覚えないの判断基準は?
英単語1万語を仮に覚えられたとしても、
普通の英文に知らない単語が出てこなくなることはほぼありません。
その時分からない単語は、
・とばして読む
・意味を推測して読む
・辞書を引きながら読む
などでしょうか。どれが良いのでしょう?
よく聞くかもしれませんが、分からない単語が形容詞や副詞であれば、
文意を読み取るのには影響が少ないかもしれません。
よく「知らない単語は推測して読みなさい!」と、
おっしゃる英語の先生もいるかと思います。
Nuttall,(2005)という研究者が、こんな事をいっています。
「常に分からない単語を読み飛ばす習慣をつけるのは問題。
短期的には読解力が高まったとしても、英文の詳細を読み取る力
や語彙力が伸びにくくなるため、長期的な悪影響が予想される。」
(Nuttall,(2005)より引用)
また、知らない単語の意味を推測できるのは、
「文脈に十分なヒントがあり、さらに分からない単語の
前後にある文脈のほとんどを理解している必要がある」
(Grabe,2009)
英文に出てくる単語の95%以上が分かれば
「辞書の助け等が必要かもしれないけど、自分で英文が理解できるレベル」
というリサーチと繋がります。
当たり前ですが、知らない単語をいつも読み飛ばしてばかりでは英語は上達しません。
知らない単語に出会ったときは、
・その単語の頻出度を調べてどこまで覚えるか判断
・自分が読んで分かればいい単語
・自分が使えるようになりたい単語
に分けて、どの程度深く覚えるかを自分で決める事が大切です。
単語頻出度は、例えば、weblioの「学習レベル」等でも分かります。