(02- 第二言語習得研究に基づく最新の英語教育)
◆英語(第二言語)の習得順序には共通する事があります。
・シンプルなものから複雑な事を習得していく
・重要度の高い事から低い事へと習得していく
・目立つ事から目立ちにくい事を習得していく
池谷裕二さんの脳の本に学習手順のおすすめとして、
大枠の理解から細部の理解を進めるプロセスが書いてあります。
上の3つはこのプロセスにも似た事で、
初めからこまかな事を気にするより、この3つを意識し、
学習を進めていくほうが効率的です。
例えば前に出てきた英文法の話で、
過去形の不規則動詞の習得が、規則動詞より早いのはなぜ?
という疑問がありましたが、これは目立って単語の形が変わり、
重要度も高いからでしょうか。
文法の勉強も、自分がわかりやすいものから習得していき、
定期的にテストをする等し、少しずつ改善していくのもよい方法です。
◆文法に焦点をあてたもので、英語を間違えた時、
間違えた原因を考え、そこから英語習得をうまくすすめられないか?
その後の学習に役立てられなか?というリサーチがあります。
~考えられる原因~
・日本語(母国語)の影響によるもの
・英語文法ルールを間違って広く適用してしまう
・学習事項を簡単に省略して学習したことによるもの
・言い換えなどで不足知識を回避したままの状態
母国語の影響はやはり大きな要因で、
文法が大きく異なる言語はやはり習得が難しくなります。
文法を深く理解せず、間違いや苦手表現を言い換えで回避しているために、
なかなか習得できない文法がある、という原因もあります。
「教師は学習者の誤りを評価することで、学習者が
習得過程のどの段階に位置し、次の段階に進むた
めには、何を学習すべきかを指導することができ、
学習者は結果的に誤りを生み出すことで学習を進
めることができるわけである。」
(P57、第二言語習得研究に基づく最新の英語教育、より引用)
「間違いを気にしないで!」と言う先生がいますが、間違えてばかりではなく、
間違えた理由を考え、修正し、上達できるように気をつける事が大切です。
◆英語(第二言語)の発音の習得についてです。
大人は日本語(母語)の音の形成が完成してしまっているので、
その音に合わせて理解しようとします。
よく言う日本人が苦手な、「r」と「l」の発音を
「らりるれろ」に置き換えてしまうようなものです。
しかし、決して大人の発音もネイティブに近づけないわけではなく、
長時間の聞く訓練をした後では、
半分近くの人がネイティブ並の発音に近づいたという例があります。
『20名の被験者に、音調やリズムに注意させて外国語音の聴覚訓練を
長時間行った後に模倣練習をさせるという実験をした。結果は、被験
者の約半数が母語話者に近い発音を習得した。』
(P57、第二言語習得研究に基づく最新の英語教育、より引用)
発音の上達度は、学習者の発音に対する関心度の高さが大きく影響します。
発音に気をつけて学習を進め、しっかりと聞いて練習すれば、
学習時期にはそれほど左右されず発音は上達していくようです。
◆ここでも、言語習得と年齢との関係が詳しく書いてあります。
まだまだ研究が必要という前置きがありながらも、
今まで読んできたものと似ています。
Penfield and Roberts(1959)やLenneberg(1967)の引用を元にしたもので、
『言語習得の到達レベルは、学習時期が
思春期前と後で大きく影響する傾向がある。』
中学生位までの学習が大切というところでしょうか。
脳の柔軟性など、年齢に伴う神経機能の変化があるからというものです。
これは母語習得の年齢による影響を調べたもので、
私たちが学ぶ英語のような第二言語習得にも当てはまるか?
という問題もありますが、おそらく第二言語習得にも当てはまるようです。
–コラム–
文法習得についての面白い具体例があります。
不定詞は渡米後6ヶ月位の早い時期で習得ができたが、
動名詞は1年後でも習得できていなかった。
苦手な項目は、意識して勉強したほうがよいでしょう。