(03- 第二言語習得研究に基づく最新の英語教育)
◆アメリカの移民の英語レベルを調べたデータがあります。
移民になった時点での年齢に注目したもので、
滞在期間については3~26年とばらつきがあります。
英語の上達度合を調べ、英語学習(第二言語習得)の
年齢の影響をみてみるというものです。
Critical Period Effects in Second Language Learning
/ JOHNSON AND NEWPORT参照 P87のグラフ,FIG.3
文法のテストをしたもので、エラーが少ないほうがネイティブに近いという見方です。
グラフの右上にあるのがアメリカに到着した時の年齢、
DET(冠詞)、PLU(複数形)、SUB(動詞の形)、PST(動詞の過去形)、
などは文法のテスト項目です。
エラーが少ない下の方にある実線はネイティブのテスト結果で、
エラーの多い1番上にある点線が25~39才の時に移民になった人のテスト結果です。
これを見ると、思春期以前に英語学習をはじめるというより、
10才前には始めた方がよさそうです。
文法に関しては、17歳を過ぎると習得が難しく、
ネイティブに近くなれるのは10才前まで、11~15才はその中間位、
といったところです。
それでは、大人になってからの英語学習はどうすればいいのでしょう?
思春期(臨界期)を過ぎた大人は、英語(第二言語)を
母語話者並にマスターすることはできるのでしょうか?
◆大人と子供の違いからくる、言語習得の考え方にはいくつかあり、
どれも断言できるものではないようですが、共通している事もあります。
例えば、Felix(1985,1986)は、言語習得に関係する能力を
①言語専用の認知能力
②問題解決能力
の2つに分けています。
①の言語習得に役立つ能力は、10代後半頃から低下していきます。
そこで言語習得を目指す大人は、①を②で補おうとします。
②は逆に大人になるにつれて発達する能力です。
②は分析的、意識的に言語習得をする能力です。
大人が英語をマスターするためには、意識的に勉強する事が必要です。
『PS-systemが高い段階にある大人には、
意識的に文法を教えることを併用する方が効果的
であるばかりか、そういった方法を使用しなけれ
ば、L2を高度な段階にまで発達させることがで
きないという予想もできる。』
(PS-system:problem solving system/問題解決能力)
(P159、第二言語習得研究に基づく最新の英語教育、より引用)
大人が英語習得をする為には、理論的学習は欠かせません。
◆外国では早期外国語教育が進んでいて、
小学校で第二言語の勉強をしているところもあります。
それも毎日授業があったりという状況です。
幼い頃に目的とする言語を大量にインプットする事ができています。
脳生理学者W.Penfield(1959)
『(1)母語習得は4歳位までに一応完了するので、
その頃が外国語習得を始める最適期であろう。』
(P170、第二言語習得研究に基づく最新の英語教育、より引用)
子供のころに外国語をマスターすると、
他の言語もマスターしやすくなる事もあるようです。
またここでは、なまりの無いネイティブ並の英語にしようとするなら
6歳までに習得したほうが良いとあります。
8歳までが限界という話もあります。
目安としては、小学校低学年までの英語習得が理想というところでしょうか 。
◆学校で先生が教える英語は、
生徒のレベルに合わせて、先生は分かりやすい英語を使います。
「独特の言語使用域の中で話す」とこの本の中ではあります。
その為普段の言語環境とは少し異なり、結果として、
授業中だと英語はよく分るけどネイティブの英語がよく分からない、
という状況が発生します。
日本人英語教師の、生徒への間違いの指摘についてのリサーチ結果もあります。
Kubota(1982)『10年以上の経験豊富な7名の日本人英語教師は、
言語構造上の謝りの1/3を無視し、…(省略)』
(P184、第二言語習得研究に基づく最新の英語教育、より引用)
誤りを全て指摘してたら授業にならない?
またここでは、言語上達の第一歩は、自分の誤りに気づく事から始まるともあります。
流暢さに重点をおいたクラス、
誤りを気付く事に重点をおいたクラス、
などバランスのとれた授業を受けることが大切です。