(01- 「達人」の英語学習法)
◆外国語教育研究をしている方の本です。
自分の英語の勉強方法や、
英会話の先生が言う学習方法に疑問を持っていた頃に読んだ本が、
この著者の方の別の本でした。
とても共感がもて、そこから英語勉強法に興味をもちました。
高校生以上で英語を勉強している方にこの本をおすすめします。
この本の序章部分に、
英語の目標を『ネイティブ並』とする事は考えたほうがよい、とあります。
自分もネイティブみたいになりたい、と思っていたことがありますが、
それはあまりに目標が高すぎて(ほぼ無理…)、挫折する理由になりかねません。
どんなに流暢なバイリンガルでも、
どちらか一方の言語が優勢になっている事がほとんどで、
ネイティブ並みという目標の難しさはここからも分かります。
◆また「臨界期」の真偽も書いてあります。
臨界期とは時期の限界、のような意味で、
例えば英語をマスターしようと思った時、学習の開始は若い頃の方が良いとすると、
何歳位までが言語を習得しやすいのか?=臨界期はいつなのか?
という意味です。
ここでの結論は「臨界期」が必ずしも存在するとはいえないという見解ですが
いくつかデータもあり、例えば Jhonson&Newprt のデータがあります。
P6の上の方にある点グラフです。
http://www.cse.iitk.ac.in/users/hk/cs784/projects/indrani.pdf/
これは、移住してきた人の英語の上達度を調べたもので、
横軸の「Age of arrival」がアメリカに移住してきたときの年齢、
縦軸がテストスコアで英語の上達度を示しています。
どの人も滞在年数は10年になるように配慮されており興味深いデータです。
10代前半頃までに英語の環境に入った方が良いでしょうか。
若すぎて4、5歳の頃の移住となると、母国語のレベルが気になるので、
このグラフからだけでは、いつがベストなタイミングというのは何とも言えないでしょうか。
一方、20歳をすぎても、30歳をすぎても、高得点の人がいる事は事実なので、
年をとっても第二言語の習得は可能、といってもよさそうです。
ただ、平均点数は老いていくかのように下がっています・・努力次第です。
◆多重知能という考え方が紹介されています。
国語が得意で算数が苦手だったりその逆だったり、
言葉の記憶はとても優れているのに、
顔の記憶がとっても苦手な人がいたり、
知能にも種類があるという考え方があります。
どんな種類の知能があるのでしょう?
Gardener(1983)レポートをもとに知能の種類を分けるとこのような感じです。
1:Linguistic intelligence
…例、国語が得意な人
2:Logical-mathematical intelligence
…例、算数が得意な人
3:Spatial intelligence
…例、地図が楽に読めたり空間認識が得意な人
4:Bodily-kinesthetic intelligence
…例、マイケルジョーダンのような人
5:Musical intelligence
…例、モーツァルトのような人
6:Interpersonal intelligence
…例、対人関係のうまい人
7:Intrapersonal intelligence
…例、自分の強み、弱みを分かっている人
(Gardner 1983 より一部引用)
得意な知能が個々にあるなら、それをいかした英語勉強法があるのでしょうか?
◆人によって英語学習に向き不向きがあるのか。
英語習得で外交的な性格の人とそうでない人との上達度合いの違いは。
コミュニケーションなのでどんどん人と話すような外交的な人が、
英語習得に有利だと思うのですが、
実際のところは外交的な人でも文法や発音のスコアが悪かったりと、
一概には言えないようです。
また、こんな事も書かれています。
『「まことしやかな俗説、あるいは少人数の偏った経験則にまどわされない」
「データが科学的な方法で蓄積されていないことは信じない」
こういった姿勢を持つことが何よりも大切』
(P44、達人の法英語学習方法/竹内理著 より引用)
書店に平積みされている英語勉強法の本の中には、
偏った経験則が元となったものが多い事もあります。
売ることだけを考え、楽な学習方法をうたった本だったり。
俗説等を信じるより、ある程度データに基づいた、
理論的な英語学習方法を取り入れ、苦労を前提でどう英語を上達していくか?
という事を考えるきっかけになります。